ひらめき要素が強めかもしれない #冒頭文の漢字だけで文学作品

十八世紀の大小説家井原西鶴の小説に「本朝二十不孝」というものがあります 不道徳教育講座／三島由紀夫

机の上を片付けると、ちょっとの間、考えをめぐらし、立ち上る。 三毛猫ホームズの花嫁人形／赤川次郎

あわただしく、玄関をあける音が聞えて、私はその音で、眼をさましましたが、それは泥酔の夫の、深夜の帰宅にきまっているのでございますから、そのまま黙って寝ていました。 ヴィヨンの妻／太宰治

「ホホホ。つまりエチオピアへお出でになりたいからダイナマイトをくれって仰言るんですね。お易い御用ですわ。ホホホ」 女坑主／夢野久作

こうして話を始めるとなると、君はまず最初に、僕がどこで生まれたかとか、どんなみっともない子ども時代を送ったかとか、僕が生まれる前に両親が何をしていたかとか、その手のデイヴィッド・カッパフィールド的なしょうもないあれこれを知りたがるかもしれない。 キャッチャー・イン・ザ・ライ／J.D.サリンジャー

泉を囲んでいる藪のかげから、ポパイはその男が水を飲むのを見まもっていた。 サンクチュアリ／フォークナー

本書はウィリアム・スタンリー・ミリガンとの数百回におよぶ面会と会話、さらに彼とかかわりのある六十二人と会って聞いた話から生まれた。 24人のビリー・ミリガン／ダニエル・キイス

モリー・レインのかつての恋人ふたりは二月の冷気に背を向けて火葬場付教会の外に立っていた。 アムステルダム／イアン・マキューアン

留守をしているときに電話があり、ご帰宅後すぐお電話ください、大事な用件なのでという伝言があった場合、大事なのは先方のことで、こちらにとってではないことが多い。 お菓子とビール／W.S.モーム

『悲劇の誕生』から最近出版された『将来の哲学の序曲』にいたるまで、あらゆるわたしの著作には、なにか共通するもの、人目を引くものがある、とわたしは、もうたびたびいつも大変不審そうに告げられている、それらの著作はことごとく、不用心な鳥に対する罠や網をしかけてあり、世に行われている価値評価や尊重されている習慣などを転換させるべく、たえずひそかに挑発しているようだ、ともいわれている。